「Vulgar Display of Power」(1992) / Pantera

レビュー

重戦車級の破壊力を持つヘビーメタル

『俗悪』という邦題で知られているパンテラの代表作。ヘビメタというジャンルにおいても、このパンテラのサウンドは、かなり暴力的である。ギターサウンドの鋭利さや重たさもさることながら、ヴォーカルも絶叫しまくりで、聴く人をかなり選ぶバンドだと思っている。確かにそうなのだろうけど、それでも本作が全米44位まで上り詰め、さらには今でもヘビメタの名盤として評価され続けている事実から考えても、今やアングラなイメージは無い。

81年から活動を行っていたバンドだが、86年にフィル・アンセルモがヴォーカルとして加わったことで、全盛期のスタイルが出来上がった。90年代に入り、グランジ・オルタナがシーンを席巻してメタルが衰退していく中、そんなこともお構いなしに売上を伸ばしていった彼ら。それどころか、後に現れるニュー・メタルやヘヴィ・ロックバンドに多大な影響を与え、90年代のに新たな流れの基盤を作ったとも考えられている。

パンテラのサウンドは、すべての音が重戦車のように重たい。個人的にヘヴィメタを聴き始めた当時は、Helloweenなどのメロディアス系のものしか知らなかったので、彼らのサウンドを初めて聴いたときの衝撃的はとても大きかった。終始がなり声のフィルのヴォーカル、一音一音が突き刺さるかのようなヴィニー・ポールのドラム。そして特筆すべきはやはりダイムバッグ・ダレルのギターだろう。リフメイカーとして数々の名リフを、切れ味鋭くヘヴィなサウンドで生み出してきた彼は、バンドのトレードマークとなっていた。

正直、本作のどこを切り取ってもPanteraの暴力的なサウンドを堪能できる。うねりのあるサウンドで畳み掛ける#1「Mouth for War」から始まり、とりわけ重量感のある#2「A New Level」、縦ノリしやすい名曲#3「Walk」と、始まってから佳曲が続く。他にもスピード感を兼ね備えた#4「Fucking Hostile」、#6「Rise」などは鬼気迫るものを感じさせる。後半も印象的なリフの曲が満載で、重たいサウンドにひたすら打ちひしがれることになるだろう。

本作以降、よりサウンドに重みが増していき、楽曲やダレルのギターも新しい試みが導入され、癖が強くなっていく印象がある。その点『俗悪』に関しては、楽曲の統一感もあるし、一聴で良さが分かるとっつきやすさもあるので、多くの方に支持されているのも頷ける作品である。パンテラを初めて聴く方はもちろん、ヘビメタ入門としてもオススメできる作品であると思う。

トラックリスト

  1. Mouth for War
  2. A New Level
  3. Walk
  4. Fucking Hostile
  5. This Love
  6. Rise
  1. No Good (Attack the Radical)
  2. Live in a Hole
  3. Regular People (Conceit)
  4. By Demons Be Driven
  5. Hollow

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