「Solid State Survivor」(1979) / Yellow Magic Orchestra

レビュー

全ては計算

中期の実験的な作品も素晴らしいけど、世間一般のYMOのイメージはやっぱりコレ。

#1「Technopolis」#3「Rydeen」が収録された、言わずと知れた大ヒットアルバム。日本にテクノポップブームを巻き起こすだけでなく、YMO自体が社会現象となり、彼らの命運を良くも悪くも大きく変えた、いわば全てのきっかけを作った作品である。

恐らくコンピューターミュージックを歌謡音楽に昇華した金字塔的作品である。YMOがKraftwerkから強い影響を受けたことは言うまでもないが、あちらがともすれば革新的で終わってしまうところを、YMOはコンピューターミュージックを世間一般にまで浸透させ、さらにはその可能性を大きく押し広げた。その功績は非常に大きい。

個人的に、当時の活き活きしたとした収録風景が印象的で、シンセやコンピューターという新たな”武器”を手にしたことで、音楽に新たな可能性や未来が広がったことにワクワクしている様がとても良く伝わってきた。今までは”感覚”で行なっていた音楽について、リズムや音を数値に置き換え、新たに音楽の方程式を作り出していくという作業は圧巻である。

例えば、沖縄音楽を意識して作られたという#2「Absolute Ego Dance」も、そんな計算や方程式が織り込まれてあの雰囲気が作り出されているのである。聞けば聞くほど、知れば知るほど凄いグループだったのだと唸ってしまう。ヒット曲のポップさとは裏腹に、RPGの音楽のような#4『Castalia』は、もはや時代の先を言っていたような楽曲である。

全体的に時代を感じさせるサウンドではあるが、いつの時代も”近未来”と言うワードをサウンドに置き換えるとこんな音で表せるのではないだろうか。今聴くと逆に新鮮である。ちなみにメンバーは、このアルバムが売れるとは思っていなかったらしく、あまりの反響の大きさに驚いたそうだ。

しかし、当時を知らない私が今聴いても素晴らしいと感じた作品だし、一過性の狂騒で忘れ去られてしまう作品とも到底思わない。そこにはやはり、彼らが計算で創りあげたサウンドと、音楽の新たな歴史を拓こうとした熱意が込められており、それが組み合わさったからこそ多くのYMOチルドレンを生み、現在まで語り継がれているのだと思う。

さらなる実験性や完成度は中期の作品に譲るとして、とりあえずYMOを知りたい人、当時の雰囲気を味わいたい人(?)はぜひ聴いてもらいたい。

トラックリスト

  1. Technopolis
  2. Absolute Ego Dance
  3. Rydeen
  4. Castalia
  1. Behind The Mask
  2. Day Tripper
  3. Insomnia
  4. Solid State Survivor

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