「Murmurs」(2006) / Caroline

レビュー

可愛らしいエレクトロニカの定番

エレクトロニカと女性のウィスパーヴォイス。この組み合わせは今や定番で、近年は根強い人気があると思っている。個人的にはエレクトロシューゲバンドのGuitarでこの手の音楽を知ったのだが、この類のアーティストはサウンドからジャケットまでセンスが現代的でとても好きだ。静寂の中で小刻みに震えるようなサウンドはとても心地よく、リラックスしたい時や美しい景色を眺めている時など、様々なシチュエーションで聴くことができる音楽である。

本作は、ポストロックバンドMice ParadeのヴォーカルであるCarolineによる1stソロアルバム。その可愛らしい歌声が穏やかなエレクトロの波に溶け込み、様々な情景を作り出している。ジャケットに雰囲気がよく出ているので、CDショップで目について試聴機で聴いたら衝動買いしたくなるだろう。

全体を通して聴いてみると、可愛らしい声やサウンドとは裏腹に孤独感や悲壮感を強く感じさせる作品であった。細かいノイズや限られたサウンドをゆったりと聴かせ、音が我々を眠りに誘うかのように辺りを漂う。そんな雰囲気を感じとった途端、その歌声はまるで溜息をついているように聴こえてくる。また、落ち込んでいる我々を包み込むよう暖かい気分がとても心地よい出来る作品でもある。

とても寂しげな#3「Sunrise」は、タイトルに反して夕焼けに染まる街並みを一人ぼんやり歩いているかのような情景が浮かぶ。#7「Drove Me to the Wall」は、個人的に本作に出会うきっかけとなった曲で、サビの開放感と悲壮感が心にグッと来る名曲である。他の楽曲も基本的に上記の雰囲気を踏襲しており、統一感があってあっという間に聴くことができる。

余談だが、彼女は日本の女性シンガーOLIVIAの妹である。#5「Everylittlething」のクリーンなハイトーンは、それを意識させるものであった。クリスタルボイスの姉に負けないほどの美しさ、そしてフェミニンな歌声を持ち合わせ、何気なく耳に流れ込んできたらとても幸せな気持ちになれるんだろうなと思う。可愛らしくて優しい音色に溢れながらも、夕焼けのようなモノ悲しさを持ちあわせた、エレクトロニカファン要チェックのアルバムである。

トラックリスト

  1. Bicycle
  2. Pink & Black
  3. Sunrise
  4. Where’s My Love
  5. Everylittlething
  1. All I Need
  2. Drove Me to the Wall
  3. I’ll Leave My Heart Behind
  4. Winter

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