90年代に人気を博した黒夢の4thアルバム。本作には副題に「I’M JUST A JAPANESE FAKE ROCKER」とついている。
メンバー自ら”売れ線狙いのナンバー”と位置付けてリリースした名曲#3「BEAMS」を収録。
他にも卒業をテーマにした#6「SEE YOU」のようなポップなシングルもリリースするなど、表向きでは大衆受けのポップな音楽性へシフトしたように見えたこの時期。
ポップの仮面を被った劇薬パンク・ロック
しかしそれと相反するように、棘を鋭く生やし始めた清春の歌詞と、彼の言葉に説得力を増させるサウンドの攻撃力。それはまるでポップな仮面に真実の顔を隠しているかのようである。
おかげで、自らが#3「BEAMS」でポップを体現したことが当時の音楽シーンへの皮肉にも聞こえてしまい、これは彼らの計算通りといったところなのかもしれない。
この曲でCDTVに出演した際の清春のコメントが今も忘れられない。
「売れる曲(強調)ってのを作ってみましたー(軽い)
カラオケなんかでも歌えるじゃないですかー(バカにした感じ)」かつてこんな卑屈に自分の曲を紹介したアーティストを私は知らないw
「黒夢」の背負った十字架 : 80年代後半~90年代前半を回顧するブログ
今回の作品は、いくつかの曲の合間にSEトラックを挟み、複数のプロットを重ねたような構図になっている。清春曰くこのSEの効果は、リスナーに場面転換や小休止を期待してのこと。
今作の刺々しさを体現するタイトルトラック#2「FAKE STAR」は一番の目玉だが、個人的には次に続く#3「BEAMS」、#4「BARTER」がとても素晴らしく感じた。それぞれが全く違う空気を放っていながら隣り合わせに並んでいるこの二曲は、聴くほどに味が出てくる。
ピコピコした電子音をバックに暴力的に疾走する#4「BARTER」は特にお気に入り。他にも情緒的で繊細さが際立つ#13「HYSTERIA’S」は、美意識の高さも感じられる名曲。
シングルとして出された、サビのフレーズが印象的な#14「ピストル」は、SEの音が大きくなっている。
このように電子音などの音響効果を全体に存分に生かされていることにも注目したい。
本作から音楽シーンにかみつき始めた黒夢。本作以降の作品はキレぎみで、且つパワフルで禍々しいオーラを放っているため、バンドはポップとは無縁の存在になっていく。
もっとも、それが黒夢らしい姿なのかもしれないが、あれこれと模索しながらも様々な音楽性に染められたこの作品にも是非とも触れておきたい。
バンドの以前と以降の雰囲気の両方を味わえる、黒夢にとって大きなターニングポイントとなった作品。
トラックリスト
- Noise Low3
- FAKE STAR
- BEAMS(FAKE STAR VERSION)
- BARTER
- SE I “SUNNY’S VOICE”
- SEE YOU(FAKE STAR VERSION)
- REASON OF MY SELF
- SE II
- SEX SYMBOL
- Cool Girl
- S.O.S
- SE III
- HYSTERIA’S
- ピストル(FAKE STAR VERSION)
- 夢
- 「H・L・M」is ORIGINAL
- SE IV “EITHER SIDE”
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